相続相談のこんな場合
金融システムに内包されるモラルハザードを許す構造を除く。
監督官庁と業界の不透明な関係をたちきり、業者行政、業界(業態)行政ではなく市場(機能)行政をおこなう。
重要な点は、事業リスクの取り手の問題として、自己責任原則の確立と、情報開示のもとに信用リスクを市場で配分していくメカニズムを尊重することである。
金融技術を担う金融工学の育成を長期的な視点にたって、金融・経済戦略として、人的インフラ拡大のため、日本全体の知識ベースの拡大戦略をとることが必要である。
具体的には、大学の問題としては、概念展開力をもつ人材を育てるための文科系の大学院化を進め、日本の学者にインセンティブ競争システムをつくり、国際的な水準で業績を評価することが必要である。
官僚の人事に関しては、博士学位をもつ高度に専門化した人材の採用と機能的視点からの専門性に基づく人事の流動化、上級公務員について契約雇用制度の導入等が必要であろう。
企業における博士学位をもつ人材の採用、ノーフリーランチ的企業教育システム(終身雇用を前提とした会社派遣の留学制度の変更と自己負担化)、官学産によるシステム構築のあり方(審議会形式)の再検討(アメリカの物真似制度設計からの脱却)等が必要である。
「金融工学とは何か」ということを理解していただくことにあるので、資本蓄積が進んだ資本主義の中での金融の進む方向とそのあり方、そこでの金融工学の果たす役割を中心に議論してきた。
そのため、「豊かさ」のために、さらなる経済発展を求めることを前提として、資本の効率的利用と金融と金融工学の関係の議論が中心となり、生活者の立場からの議論は少なくなっている。
その問題は、「人間と資本と国家の関係」を議論する資本主義論に関わる問題でもある。
その上で、この問題にふれるとすると、多くの人が「豊かで幸せな」人生を生きることを可能にする社会は、資本の効率的な利用がメカニズムとして確保される経済システムでないと実現できない、と考えているということである。
実際、日本の貧しい時代を振り返ればわかるように、また現在の大激変の中で起きているリストラや失業などの現象を見ればわかるように、「豊かさ」や「福祉の充実」のためにはそれを保証する経済基盤が必要であろう。
他方、機会平等の社会では広い意味での能力原理が基本となり、「弱者」に厳しい社会となる。
これを是正するのが政治(経済システム)の問題であり、「強者」からの税金が政策の財源になる。
誰かが稼がなくてはならないのである。
そこで重要なのは国家の機能である。
国家がであり、この視点を欠いた「結果平等」の社会では、結果的に所得も減少し、税収も上がらず福祉も削減され、多くの人が満足できないことになるだろう。
資本の有効利用の問題は、世代間公平性を議論する上でも重要な問題でもある。
実際、結果平等社会から機会平等社会への移行過程では、各世代に対して厳しい状況を作りだしている。
「大激変」に否応なくさらされている生活者にとって重要なことは、それが何であるかを理解することがまずもって必要である。
本書はこの点については、世界的なストック経済とグローバル経済の中で進行する、資本の有効利用の要求からの機能的金融への流れを理解することが重要である、という認識に立っている。
その立場からは、「大激変」は国家に生活を大きく委ねてきたことによる「固定化経済社会のリスク」が現実のものとなっていると理解される。
年功序列賃金や終身雇用制度の崩壊、新卒者の就職難など、若者にも中堅労働者にも厳しい現実をつきつけている。
結果として、日本型の法人を中心とした中央集権的共同システムが、資本のダイナミズムと非整合性を持っていたことを示しているので生活者の経済問題に関わるのは、「効率と分配(生産性の効率と所得や富の分配)」の問題である。
これは、経済学のきわめて重要なテーマであるが、ここでは立ち入ることができない。
ただ注意しなければならないのは、国家を運営する主体は、絶えずみずからの権力基盤を拡大したいというインセンティブを持つので、法律にもとづく制度に依拠した手法をとりがちとなり、経済システムと資本の効率性の関係に非整合的なものを積み上げていく傾向にある、という点で機能的な金融システムは、機会平等のもとで自己責任原則を前提とする。
そのシステムでは、生活者の商品選択や金融的行動の自由度は増すものの、資産価値に関するリスクも自ら管理することが求められる。
そこでまず、生活者のリスク管理の視点を述べておく。
資産の相対価値の変化によって蓄積された資産はリスクにさらされており、ストック経済が進行した社会では、生活の中で知らず知らずのうちに富の再配分リスクが老後の生活に影響を与えていく。
その意味では、生活者自らの自己責任のもとに資産管理、リスク管理に注意を払うことが要求されているのである。
この問題を、私が一九八七年に経済企画庁発行の雑誌「ESP」(「最近の株式市場とリスクと政策」八七年六月号)に書いた論点を紹介しながら議論してみよう。
当時は、円高不況を背景に低金利政策が取られ、過剰流動性のもとに「バブル」が始まっていた。
その論文は、「リスクという視点から株高・土地高現象を眺め、経済政策と関係したリスクが、資産分布へもたらす影響を指摘したい。
日本は、次第に富者と貧者の二重構造社会へ進行していくように思われる」という文章から始めた。
なぜ富者と貧者の分化が進行するかという議論は、「株式市場と土地市場の相互作用と集団的期待・バブル的期待」により、資産の相対価格を大きく変えるという議論に基づいている。
今後、不動産市場の役割は、バブルの時とは異なるであろうが、資産間の相対価値の変化による貧富の格差は一層進行すると予測する。
もちろん機会平等社会であることから生じる貧富の格差も進行するが、それは能力原理によるもので、資産間の相対価値の変化によるものと区別する必要がある。
残りの部分では、本書の流れに沿った機能的金融の立場からの生活者のリスクの問題にふれておく。
資産の相対価格の変化によるリスクの問題は議論したが、これを生活者の視点に立った「安全資産は危険資産」の内容で補完しておこう。
「資産の相対価値を測る尺度として金利、物価、為替がある。
金利は金融資産の相対価値を測り、為替は他国間の通貨の相対価値を測る。
これら三つの相対価格は、経済主体のフローの面での経済活動のみならず、ストックとしての資産の管理運用の意思決定に重要な役割を果たしている。
金利の自由化は進みつつあるものの必ずしも十分でない。
特に小額預金金利は公定歩合に連動した規制金利である。
他方(株価との相互作用により)土地価格が急騰している。
東京近郊の住宅地でも二年前と比べて二倍あるいはそれ以上になっている。
このことは、貯蓄動機が土地購入にある限り、貯蓄を預貯金の形で保有していた人にとっては、半減したことになる。
小額預金残高保有者は、その小額性のゆえに株式等価格変動性(リスク)を伴う資産運用を避ける。
その結果、対土地購買力半減という大きなリスクを被ることになる。
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